私は、大学生の時、学内公募で奨学金を受ける形で、オーストリアのウィーンに1年間滞在しました。

所属していた大学から派遣される形でしたから、留学席での単位習得やらの卒業要件を満たす必要はありませんでした。それでも学ぶことが非常に多かったと思います。

ウィーン留学での経験

留学先

ウィーン

留学先は、ウィーンでした。発音が結構難しくて、ドイツ語読みだとヴィーン、英語読みだとヴィエンナ…。濁点なしの「ウ」ィーンは日本語特有の表現のようですね。(本記事では「ウィーン」で書きます。)

ウィーンは、オーストリアの首都です。オーストリアという国は、ドイツの南東、チェコの南、スイスの東にあります。

行きの飛行機では、スイス経由で行ったので、スイスの国際空港のすばらしさを克明に覚えています(帰りもスイス経由でしたが、その時のことは覚えていません)。

スイス、オーストリア、ドイツの3か国は「ドイツ語圏」を形成しています。ずいぶん訛りや表現に違いがあって、ドイツだと「Guten Tag!(グーテン・ターク)」と言うところをオーストリアでは「Grüß Gott!(グリュース・ゴット!) 」と言ったりします。

電話での最初の掛け声がこれなので、心の準備が必要です。結構、面食らいます。

ウィーン大学

ウィーン大学

留学先は「ウィーン大学」という所でした。現在では、研究の最先端の多くがアメリカに移っていますが、1900年代初頭、第一次世界大戦前までは、世界の知的営為の中心がここウィーン大学にあったと言っても過言ではありません。

そういった意味で、由緒ある大学です。精神分析学で有名なフロイトなども、ここ(ウィーン大学)を卒業しています。

キャンパスは1箇所に集中していません。「Gasse(ガッセ)」という道を挟んだ区画に散在しており、事前に講義や集会が、どの建物で行われるのかをチェックしておかないとすぐに迷ってしまうので、注意が必要です。

あと海外に在住したひとなら必ず驚くであろうサマータイム、ウィンタータイムの切り替えも、(外人らしく)何の予告も無く一斉に為されますので、十分注意してください。私もこれで時間を間違え、ひと苦労しました。

大学での講義は、基本的にドイツ語です。ただ大学生とも成るとほぼ全員が英語を話せますので、日常会話や議論において英語を使うことも可能です。このためドイツ語ができないことで意思の疎通がはかれないことはありません。

下宿

ウィーン下宿先

教授レベルの宿泊先と、学生レベルの宿泊先、2つに住みました。学生としての留学だったので、後者、学生レベルの宿泊先にずっと滞在するはずだったのですが、到着時にそこの空きがない、という理由で1か月ほど教授レベルの宿泊先に滞在しました。

結論から言ってしまえば、ギャップがすごかったです。教授レベルの宿泊先は、ほんとうにオシャレで、とにかく広い。ベッドがふわふわしていて、朝起きるのに一苦労でした。

そして都会のウィーンなのに、日中、部屋に居るのが心配に成るほどの静寂。窓から庭が見えるだけです。キッチンも広々。1Kの部屋でしたが、広さ的には2DKはありました。

シャワールームも広く、すべてがゆったり。ただ、本当の「教授」に清掃員に間違われたのは、ちょっとショックでした…(アジア系の外見に偏見が残っているのでしょう)。

他方、学生レベルの宿泊先は、現実をつきつけられたような感じでした。まずトラム(路面電車)が通っているので、ガーガーうるさい。ただ、これは頻繁ではありませんし「街の喧騒」みたいで時に心地よかったりもしますから、まだ耐えられます。

耐えられないのは学生です。彼らが非常にドタバタうるさい。まず部屋の中に居ても、通路のドアの開け閉めする大きな音が聞こえてそのたびにギクッとします。またかなりの頻度でパーティーをするのも困りました。

そんなこんなで、下宿先を選ぶときは絶対に妥協しないことをおススメします。とくに留学先では「勉強」をするので、それに支障があっては元も子もありません。慎重に「教授向け」に近い下宿先を選んでください。

ウィーン留学まとめ

ウィーンという都市は、ドイツ語の文化圏ですけれども、本家本元のドイツとは、すこし違った趣を持っています。「こんにちは」が「Grüß Gott!(グリュース・ゴット!) 」で、「Guten Tag!(グーテン・ターク)」でなかったりします。

また通りの名前には「Gasse(ガッセ)」が好まれ、「Straße(シュトラーセ) 」は稀です。こんな違いに、世界史で習ったプロイセンとオーストリアの違いを重ね合わせて、歴史を実感するなんてのも趣深いかも知れません。

ウィーン大学の講義はドイツ語ですが、日常会話や議論で英語を使うことはできません。街中で困ったら、若いひとを探してください。ほぼ全員が英語を話せます。

一番苦労するのは下宿でしょう。ウィーン大学の中に下宿紹介先がありますので、そこの「素っ気ない」職員に、しかし粘り強く自分の希望を伝えてください。「変なアジア人」と思われようが、これは死活問題なので妥協は禁物です。

色々ありますが、最後は絶対に「良い経験だった」と思えるはずです。実際、私は今、偽りなくそう感じています。