米国は「人種のるつぼ」であるとよく言われますね。それを聞いてみなさんはどのように感じますか。多様な文化を受け入れる自由な国だと思うでしょうか。

「ハリウッド」「ニューヨーク」等の地名を聞くだけで華やかな印象があり、日本でも、米国風のカフェが人気ですね。「いつか米国に行ってみたい」と憧れる方も多いでしょう。

米国に関心がある方にこそ、「人種」差別という厳しい現実があること、真剣に考える必要性があることを、ぜひ知っておいてほしいと思います。留学の実体験からご紹介します。

「人種」は社会的に作られたもの

「人種」は社会的に作られたもの

米国の大学で受講した数多くの講義の中で、それまで日本で抱いていた価値観を大きく揺さぶられたのは「ラテンアメリカ移民の現状」でした。担当教授は、穏やかで華奢な女性の方で、他の教授とは異なり、いつもゆったりとしたコットンの服を着ていました。

ご存知の方も多いと思いますが、「ラテンアメリカ」とはメキシコ以南の国々を指します。カナダ・米国とは、異なる文化圏という意味です。

トランプ大統領によるメキシコ国境の「壁」がニュースになりましたが、ラテンアメリカからの移民が多いのは、米国との貧富の差が大きいためです。政治状況をはじめとする要因を背景に、移民の人たちは、米国で働いては家族に仕送りをする等、厳しい環境に置かれています。

その女性教授は、積極的に移民の人たちに聞き取りをし、ラテンアメリカ諸国に赴いて現地調査を重ねていました。彼女の話の中で心に残っている言葉が2つあります。

「『人種(race)』とは、人間が社会的に作り上げた差別的な言葉です。私の講義では『民族(ethnic group)』という表現を用います」

「『アメリカ』は大陸名であり、『アメリカ』という国は存在しません。United States of Americaですので、USまたはUSAと呼ぶのが適切です」

米国で痛感したのは、肌の色によって区別される「人種」差別のピラミッドでした。言葉にしがたい何とも言えない感覚です。

最も上に来るのは、言うまでもなく白い肌の学生(European decendants)。肌の色が白いというだけで、胸を張っているのを感じました。

その他は、褐色の肌(Latin Americans)、赤色系の肌(Native Americans)、黄色い肌(Asians)、黒い肌(Afro-Americans, African decendants)というように、肌の色で区別されるのです。

私は、一個人ではなく、黄色い肌の学生としてひとくくりに見なされていると感じました。その教授が「人種」は作られたものであるということは、体感として刻まれました。

「アフロアメリカンの歴史」の講義の様子

「アフロアメリカンの歴史」の講義の様子

「人種」差別の中でも、最も顕著であったのは、白色(White)と黒色(Black)の対比です。例えば、教授陣やスーツ姿の会社員風の人たちはほぼ「White」である一方で、工事現場や危険な仕事に就く人たちは「Black」の人たちでした。住む地域や通う教会も、明確に分けられていました。

当時住んでいた学生寮でも、ネクタイを締めた管理人たちは「White」で、シャワー室やトイレ掃除、ごみの収集は「Black」の人たちという風に、当たり前のように「住み分け」がされていることに、とても心が痛みました。

寮の掃除をして下さる人たちの中で、不器用な私を気遣ってくれていた年配の男性がいました。よく寝坊しては寮の廊下を走っていると、「Hey!Slow down!」と笑いながら声をかけてくれたものです。

私は、自分が使う共同シャワー室の髪の毛等を拾ってもらうことが申し訳なく、その方が清掃に来る前にササッと片付けていました。

「Black & White」の問題を、歴史を含めて現地の学生たちがどのようにとらえているのかを知りたかった私は、日本の大学ではなかなか学ぶ機会のない「アフロアメリカンの歴史」という講義を選択しました。

受講していた学生の様子はどうだったと思いますか-。白い肌の学生が1人、黄色い肌の学生(私)が1人、その他は全員、黒い肌の学生でした。

大変なショックを受けました。

さらに悲しかったのは、当時親しく信頼していた「White」の女の子が、「So scary!(わぁ怖い!)Blackの講義を受けるなんて、勇気あるね。私は絶対無理!」と言ったことでした。

また、帰国する際には、ホストファミリーの女性が「日本に帰ったらBlackを見ることもなくなるわね」と言いました。私は思わず「Whiteも同じよ」と言い返し、慌てて「私の街は田舎だから」と付け加えたのを思い出します。

米国での「人種」差別まとめ

なぜアフリカ大陸出身の人たちが、遠い米国に住むことになったのか。そして、現在も差別に苦しんでいる現状について、なぜ「White」の人たちは、考えることもしないのだろうか-。それを痛感した米国留学でした。

もしも、単に「米国はかっこいい」と思っている方がいるとしたら、ぜひその歴史と現状について、考えてもらえたらと心から願います。